肩関節反復性脱臼

肩関節反復性脱臼とは

「肩がはずれた」状態のことを一般に「脱臼」と呼びますが、スポーツ中の外傷などを契機として肩関節の脱臼が起こり、それが癖になって軽微な外傷でも肩が外れるようになってしまった状態を「反復性肩関節脱臼」と言います。特に若年層では一度起こるとクセになりやすく、スポーツ活動中だけでなく、ひどくなると日常生活や寝がえりでも外れてしまうことがあります。

肩関節反復性脱臼のリハビリ 保存療法

肩の脱臼は、スポーツ選手、特にコンタクトスポーツで多く発症する傾向にありますが、動きを取り戻すことや再発防止のためにも、トレーニングは欠かせません。損傷した組織の修復が得られるとこが第一選択となります。損傷した組織が生着することで、肩甲上腕関節の安定性が得られ、脱臼をしにくい状態になります。このため、ある一定期間固定装具を使用しての関節固定を行います。この期間中は、肩関節を動かすことができないので、それ以外の要素の機能が低下しないように、現状を維持するための運動が必要となります。具体的には、肘関節の可動性の維持、肩関節周囲の筋力の維持になります。 固定期間終了後は、「動きの獲得」「筋力の改善」を目的としたリハビリへと移行していきます。

保存治療に対するリハビリ

1. 関節の可動性(柔軟性)トレーニング

固定期間後は、関節が硬くなっている場合が多いので、その硬さを改善する必要があります。その方法は、いわゆるストレッチとなりますが、肩関節は、身体の関節の中でも一番自由度(動きの方向)が高い関節で、多方向への動きが必要となります。ご自分だけで行うことは難しいことが多いので、我々理学療法士や作業療法士がその改善にあたります(他動運動)。
ある程度、動きの改善が得られたら、ご自分での練習も行って頂きます(自動介助運動)。

他動屈曲

介助屈曲

2.筋力改善トレーニング

関節を脱臼から保護するために必要な要素は、軟部組織による安定性以外に、筋力になります。肩関節外転・外旋位の強制が脱臼しやすい状況になりますので、内旋筋力の強化が必須となります。また、急激な動きに対する反応性も重要な要素で、これは筋力ではなく神経-筋の連動性となります。これら要素の向上が、保存治療でのキーポイントとなります。

内旋筋力強化

内旋筋トレ

外転位からの内旋

反応性強化

プライオメトリック

手術後のリハビリ療法

修復をした軟部組織の修復を最優先にしますが、不動による二次的な障害(廃用症候群)を予防することから始まります。痛みと相談しながら、肩関節周囲の筋力低下予防のため、等尺性筋力強化(関節を動かさない状態で力を入れる)と 装具固定による肘関節の拘縮(硬さ)予防のため、関節可動域練習(関節を動かす)を翌日より開始します。

1.可動性(柔軟性)トレーニング

その後、肩関節の可動域練習を屈曲方向(バンザイ)から開始し、徐々に外捻り(外旋)、外開き(外転)運動を追加していきます。

2.筋力改善トレーニング

筋力強化は、等尺性のものから等張性(関節の動きを伴う運動)へと進め、 体側に近い肢位での回旋運動から腕を体側から離した肢位での回旋運動へと移行していきます。この際に、ゴムバンドを使用しながら負荷をかけて筋力強化を図ります。具体的なトレーニングは、保存療法の関節の可動性(柔軟性)改善トレーニングと筋力改善トレーニングと内容は変わりありません。

手術後の腕の使用
装具は、術後2週(装具の写真)で除去しますが、日常生活での腕の使用は、4週間は控えて頂きます。特に重量物を持つことは、修復した組織へのストレスが大きいので、避けて頂きます。

スポーツ復帰
スポーツ復帰は、手術後8週後から徐々に開始し、コンタクトスポーツは、6ヶ月後からとなります。この時のスポーツ復帰の条件は、十分な動きと筋力の獲得で、かつ脱臼肢位での不安感の消失となります。

手術後の装具

リハビリのスケジュール

時期

リハビリの特徴

手術前

手術前日に現在の肩の状態(痛み、関節の動き、筋力など)を評価します。

手術当日

手術翌日

肩関節以外の部位の関節可動域練習痛みのない範囲での肩周囲の筋力トレーニング

1週後

肩関節他動関節可動域練習開始

2週後

装具除去

4週後

日常生活制限なし

2ヵ月後

軽いスポーツ活動開始

3ヵ月後

投球開始

4〜5ヵ月

コンタクトスポーツ開始

※スポーツ活動は、十分な関節の可動性と筋力が必要になります。
※再発防止のためにも、コンタクトスポーツ(ラグビー、サッカーなど)へ復帰は、肩の状態を確認しながら、 行って行く必要があります。