野球肩の原因の中で多いのが「インピンジメント症候群」です。
“インピンジ”という言葉は”衝突“、症候群というのは病名と考えると、「衝突病」ということになります。
投球フェーズのレイトコッキング期で、肩が最大に外旋した位置(肘が頭の後方に来るトップの位置)からボールを加速してリリースし、フォロースルーまでの間に肩は最大外旋から急激に内旋されます。
肩の開きが早かったり、肘が下がって肩にあそびができぶれると、肩関節の前方に大きな力が加わります。
前方に大きな力がかかると腕の骨(上腕骨頭)が屋根の骨(肩峰)に衝突し、その間にある腱や滑液包が炎症を起こしたり、損傷が起きます。
ボールを投げすぎると腱板は疲労し肩を支える力が弱くなり、肩がぶれてインピンジ(衝突)を起こしやすくなります。特にピッチャーやキャッチャーはボールを投げる機会が多いため、インピンジメント症候群になりやすい傾向にあります。
*腱板は肩関節の周りを取り囲み肩を支えている4つの筋群(筋肉―腱)で、一般的にインナーマッスルと言われます
*肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)は、腱板が屋根の骨の下をうまくくぐれるようにすべるクッションの働きをしています。
インピンジメント症候群にならないためには、弱っている腱板を鍛えるインナーマッスルトレーニングする必要がありますが、腱板は肩甲骨から出ている筋肉ですから、土台である肩甲骨が不安定だとうまく腱板を鍛えることはできません。腱板を鍛えるには、まず肩甲骨周囲の筋肉トレーニングをして、肩甲骨がしっかりするようになったら腱板の訓練をすることが大切です。
筋力訓練は最低2ヵ月行わないと効果は認められませんので、根気よく行う必要があります。
上記の療法により、ほとんどのインピンジメント症候群は改善します。
保存療法を3~6ヵ月行っても症状が改善されないような場合、手術を行うことがあります。
当院では「鏡視下肩峰下除圧術」という内視鏡を入れて行う手術を行っています。
創も小さく術後の回復も早いなどメリットが多く、復帰は必ずできます。ただ、手術後にポジションを変更したり、野球のレベルを落とす必要のある選手もいます。
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