変形性膝関節症は、加齢や肥満、筋力の低下によって膝にかかる負担が増加し、 膝の軟骨や半月板に損傷をきたす状態をいいます。膝を守るクッションの役割を担う軟骨がすり減ると炎症や関節の変形が進行し、 関節の隙間が狭くなります。
膝関節の痛みや変形が軽度の場合は、運動やストレッチ・装具・薬物療法などで疼痛の改善と予防を期待します。痛みや変形が重度の場合は手術が適応となります。
リハビリは、痛みを軽減させ変形性膝関節症の進行を予防することが目的となります。 特に「筋力をつけ体重を減らす」、これらは関節を守るためにとても重要です。一般的に行われている運動も、やみくもにやってしまっては意味がありません。たとえば、たくさん歩くことが膝の力をつけるのに効果的と思われる方も多いと思います。しかし、実は逆効果になってしまう人も少なくありません。
当院では「どんな運動」が「どんな効果がある」のかを説明をしながら、患者様に適した運動を考案し指導します。また、患者様のお仕事やご趣味に対応したアドバイスを行い、ご自分の体と上手に付き合っていく方法を一緒に考えます。変形性膝関節症の治療は,個々の症状によって様々ですが、ここでは当院で行われている一般的なリハビリの内容をご紹介いたします。
変形性膝関節症の症状が進行すると、膝の曲げ伸ばしがしにくくなります。 そうなると、膝の周りの筋肉が固くなって力が入りにくくなったり、歩きにくくなるなど、日常生活に支障をきたしてしまいます。その予防に、関節の可動域を保つ努力が必要となります。
変形性膝関節症の進行を防ぐには、骨の周りの鎧=筋肉を強くする必要があります。 とくに膝関節周囲の筋力トレーニングはとても重要となります。歩くこと以外にも、階段や椅子からの立ち上がりなど、日常的におこなう動作の大半は膝の筋力が重要な鍵となります。座ってテレビを見ているときなど、生活の中に運動を組み込むと、スムーズに継続が可能です。タオルや器具を使用してのトレーニングは、一人でも簡単に行えます。 特に体重をかけずにおこなうものは、膝への負担が少ない有効な手段です。
症状が落ち着いてからは、単純に生活動作の中で行える筋力トレーニングが大切となります。 動作に直結したトレーニングはとても効率の良い方法です。
個々の生活スタイルに合わせた動作の指導は、とても大切なリハビリの項目の一つです。患者様の普段の生活をお伺いして、安全で体の負担が少ない動作を提供します。 また、家屋構造なども確認して、家での生活が困らないよう支援します。
変形性膝関節症の手術は、症状によって異なりますが、当院では人工膝関節全置換術または内視鏡の手術が多くおこなわれております。いずれも手術後は、翌日よりリハビリを開始します。
最初は膝の曲げ伸ばしが中心ですが、筋力の回復と共にできるだけ早期に歩行練習を開始します。階段練習・日常動作練習を経て、自信がついたころに退院となります。 必要であれば、外来通院でリハビリを継続します。
ほとんどの方が痛みを我慢しながらの生活に慣れてしまい、正しい姿勢や歩き方が崩れて 筋力の低下やバランスが悪くなることに気付かないで過ごしてしまします。その結果、転倒など二次的な障害につながることも少なくありません。二次的障害が起こる前に手術を選択して、退院後にスムーズな生活復帰を目指すのも選択肢の一つと考えます。
時期 | リハビリの特徴 | 備考 |
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手術前 |
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入院日 |
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外来通院されている方は外来時に行うこともあります |
手術翌日(午後) |
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※鎮痛薬(大腿神経ブロック)を併用して極力痛みが少なく行います。 |
手術後2日目 |
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退院前日まで午前・午後の2回行います。 |
その後退院前日まで午前・午後の2回 |
退院が近づくと
退院前日
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退院後外来リハビリ通院 |
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週に2〜3回 |
術後の膝の曲がり、伸びの角度は術前から良い方が術後も目標角度の曲がり120°、伸び0°に到達しやすいといわれています。しっかりと膝の曲げ伸ばしの練習をしましょう。内科の状態で手術までに内科治療が必要な場合があります。主治医の指示に従って治療を受けておいて下さい。
術後にリハビリが不十分だと特に膝の曲がりが獲得しにくくなりますので、主治医、リハビリスタッフと通院頻度やリハビリの内容を相談しながらしっかりと継続しましょう。 また、自主トレも重要ですので確認しながら行って下さい。
体重管理は人工関節だけではなく、内視鏡での治療や手術をしない保存療法に共通して重要といわれていますので体重管理に留意して下さい。